この節では、Debian を始めるために必要なハードウェアに関する情報を扱います。 また、GNU や Linux でサポートされるハードウェアに関するより詳しい情報への リンクも用意しました。
Debian は、Linux カーネルや GNU ツールセットが必要とする以上のハードウェア
を要求しません。それゆえ、Linux カーネル、libc、gcc
などが
移植されて、Debian への移植版が存在すれば、あらゆるアーキテクチャや
プラットフォームで Debian を動作させることができます。
しかし、私たちが用意したブートフロッピーは、サポートされているハードウェア を考慮して構成されたものとはいえ、いくらかの制限があります。Linux がサポート するプラットフォームの中には、私たちが用意したブートフロッピーで直接 サポートされていないものもあります。 このような場合には、独自にレスキューディスクを用意するか (Rescue Floppy のカーネルの交換, Section 9.3 をご覧ください)、 ネットワーク経由のインストールについて調べる必要があります。
この節では、Motorola 680x0 でサポートされるハードウェアのさまざまな設定の すべてに触れるよりも、一般的な情報とさらなる情報が見つけられる場所への ポインターを紹介します。
Debian 2.2 は、Intel x86 ベースのアーキテクチャ、Atari や Amiga、 Macintosh などの Motorola 680x0 マシン、DEC Alpha マシン、Sun SPARC マシン、 ARM および StrongARM マシン、CHRP、PowerMac、PReP マシンを含む IBM/Motorola マシンの六つのアーキテクチャをサポートしています。 それぞれ、i386、m68k、alpha、 sparc、arm、powerpc として言及します。
この文書は m68k アーキテクチャへのインストールを扱います。
なお、他アーキテクチャに関する情報については Debian 移植版
ページをご覧ください。
M68000 ベースの (m68k) システムのサポートに関する完全な
情報は、Linux/m68k
FAQ
にあります。 この節では、その基本的な事項のみを概観します。
m68k 版の Linux は、PMMU (Paged Memory Management Unit) と FPU (floating-point
unit) を搭載したあらゆる 680x0 プロセッサ上で動作します。 これには、680x0
プロセッサの ``EC'' シリーズを除いて、外部 68851 PMMU を搭載した 68020
や、68030、およびそれ以降のプロセッサが含まれます。
完全なその詳細についてはLinux/m68k FAQ
をご覧ください。
サポートされている主な m68k マシンには、Amiga、Atari、 Macintosh、VME
があります。 Amiga と Atari は、Debian
の移植が最初に行われた二つのシステムです。
メンテナンスもよくされていて、最も幅広くサポートされている Debian
の移植版でもあります。 一方 Macintosh シリーズのサポートは、Debian および Linux
カーネルのどちらにおいても不完全です。
プロジェクトの進歩状況と、サポートされているハードウェアについては、 Linux m68k for Macintosh
をご覧ください。 なお BVM や Motorola シングルボード VMEbus
コンピュータは、最も最近に Debian でサポートされるようになったマシンです。 また
Sun3 アーキテクチャや NeXT black box のような、他の m68k
アーキテクチャへの移植は進行中ですが、まだ Debian ではサポートされていません。
この文書はとても不完全なので問題も多いかと思います。
有用な他のインストールマニュアルも利用できます。例えば Debian
Installation Instructions for Amiga
、Debian Installation
Instructions for Atari
、もしくは Debian
Installation Instructions for Macintosh
があります。
Debian のインストールに利用できるメディアには、フロッピー、CD-ROM、 ローカルディスクパーティション、ネットワークの四種類があります。 Debian のインストール中に、インストールステップそれぞれに適した メディアに切り換えることも可能です。 こちらに関しては Debian のインストール方法, 章 5 をご覧ください。
フロッピーディスクによるインストールは、概して最も好ましくない方法ですが、 一般的な方法です。 多くの場合、最初のブートは Rescue Floppy を用いてフロッピーから行う必要があるでしょう。 通常 3.5 インチ高密度 (1440 kb) フロッピードライブさえあれば十分です。 単密度インストールフロッピー (720 k) も Atari 用に提供されています。
CD-ROM ベースのインストールがサポートされたアーキテクチャもあります。 CD-ROM からのブートをサポートしたマシンでは、完全にフロッピーレスな インストールが可能です。CD-ROM からのブートがサポートされていなかったとしても、 一旦他の手段でブートすれば、他の方法と組み合わせてインストールに CD-ROM を使うことができます。CD-ROM からのインストール, Section 6.4をご覧ください。
ローカルディスクからのインストールも一つの選択肢です。 もしインストール先のパーティションよりも大きなパーティションに空き領域 があるなら、こちらは確かによい選択です。 また、ローカルインストーラ (AmigaOS や、TOS、MacOS からのブート用) を持つプラットフォームもあります。 実際に m68k のマシンのほとんどでは、 ローカルディスクからのインストールが好ましいでしょう。
最後の選択肢がネットワークによるインストールです。 基本システムを HTTP あるいは NFS 経由でインストールすることができます。 また ネットワーク越しにお使いのシステムをブートすることもできます。 ネットワーク越しにブートを行ない、 すべてのローカルファイルシステムを NFS でマウントして、 ディスクレスなインストールをすることも一つの選択です。 -- ただ、この方法を用いる場合は少なくとも 16MB の RAM が必要になるでしょう。 基本システムをインストールした後は (PPP を含め) 任意のネットワーク接続が可能になるため、残りのシステムは FTP、HTTP、NFS 経由でインストールすることができます。
これらの方法に関するより完全な記述や、 最も適切な方法を選択するためのヒントは、 Debian のインストール方法, 章 5 にあります。 ブートおよびインストールに用いるデバイスが Debian のインストーラで サポートされているかどうかは、以下を読んで確認してください。
Debian のブートディスクには、さまざまなシステムに最大限対応したカーネルが 収められています。そのため残念ながら、まったく使われることのないたくさんの ドライバー (新しいカーネルのコンパイル, Section 8.4をご覧ください) が、 カーネルを肥大化させています。 しかし、可能な限り幅広いデバイスのサポートは、さまざまなハードウェアへの Debian のインストールを確実なものとするためには望ましいことでしょう。
Linux カーネルでサポートされている外部記憶装置のほとんどすべて が、Debian のインストーラでサポートされています。 ただし、現行の Linux カーネルが Macintosh のフロッピーをまったくサポート していないこと、Debian のインストーラが Amiga のフロッピーをサポートしていないことにはご注意ください。 また、Atari では、Macintosh HFS システムと、モジュールとして AFFS がサポートされています。 Mac は Atari (FAT) ファイルシステムをサポートしています。 Amiga は、FAT ファイルシステムと、モジュールとして HFS をサポートしています。
最低でも 5MB の RAM と 64MB のハードディスクが 必要です。X Window System や、開発プログラム、ライブラリなどのソフトウェアを、 ある程度インストールするには 300MB 以上必要になります。 ほぼ完全にインストールするなら 800MB 近く必要になるでしょう。 また、Debian で利用できるものをすべてインストールするなら、 おそらく 2GB 近く必要になるでしょう。 ただ、実際にはパッケージ同士の衝突があることから、 すべてをインストールことは意味のないことです。
Amiga 上では FastRAM の容量は、必要な全メモリー量と関連があります。
また、16-bit RAM を搭載した Zorro カードは、
サポートされていません。その動作には 32-bit RAM が必要です。 16-bit RAM
を無効にするために amiboot
プログラムを利用することができます。
Linux/m68k
FAQ
をご覧ください。 なお、最近のカーネルは自動的に 16-bit RAM
を無効化するはずです。
Atari では ST-RAM と Fast RAM (TT-RAM) の両方が Linux で使われます。ただ、 多くのユーザが Fast RAM 上ではカーネルそのものの動作に問題があることを 報告しています。そのため Atari bootstrap はカーネルを ST-RAM 上に置くようにします。最低でも 2 MB の ST-RAM が必要です。
Macintosh で RAM-based video (RBV) を搭載したマシンを使う場合には 注意が必要です。 物理アドレス 0 の RAM セグメントが スクリーンメモリとして使われるため、カーネルが標準でロードされる場所が 利用できないのです。 そのため、代わりにカーネルと RAM ディスクが使う RAM セグメントが 少なくとも 4 MB 必要です。
FIXME: is this still true?
Linux は、マウス、プリンター、スキャナー、モデム、ネットワークカード、 PCMCIA カードなどのさまざまなハードウェアに幅広く対応しています。しかし、 システムのインストールに、これらのデバイスが必要なわけではありません。 この節では、Linux でサポートされてはいるが、 インストーラではサポートされていない周辺機器に関する情報を扱います。
Linux カーネルがサポートしているすべてのネットワークインターフェースカード
(NIC) が、ブートディスクにおいてもサポートされています。
お使いのネットワークドライバをモジュールとしてロードする必要があるでしょう。
完全な詳細については、もう一度 Linux/m68k FAQ
をご覧ください。
今では Debian や 他の GNU/Linux ディストリビューションをプレインストール したシステムを出荷するベンダーもあります。 その特典のためにより多くのお金を払おうと考えるかも知れませんが、 幅広いハードウェアが GNU/Linux でサポートされていることから、 実際のところこのようなシステムを買うことは、 一つの安心感を買うことを意味するだけです。 残念ながら、新しい Motorola 680x0 マシンを出荷するベンダーは ほとんどありません。
Linux がバンドルされたシステムを購入する場合でも、中古のシステムを購入する 場合でも、そのハードウェアが Linux カーネルでサポートされているか改めて 確認することが重要です。 前述の参考資料の中に、そのハードウェアがあげられているかどうかを 確認してください。 (もしいれば) 購入先の販売員には、Linux システムを購入することを伝えましょう。 また、Linux に友好的なハードウェアベンダーをサポートしましょう。
あるハードウェアメーカーはどのようにドライバを書いたらよいかをまったく 教えてくれません。また、Linux のソースコード公開を 妨げる非公開の同意をしない限り文書を入手させてくれないメーカーもあります。 IBM の最近の ThinkPad にも使われているラップトップコンピュータの DSP サウンドシステムなどがその一例です。 (これらのシステムの中には、 サウンド機能とモデム機能を結合させたものもあります。) また、他の例としてはマッキントッシュの旧シリーズ上の 閉鎖的なハードウェアもあげられます。 実際、Macintosh のハードウェアに関する仕様書や文書はまったく 公表されていません。 そのようなハードウェアで、よく知られているものには (マウスやキーボードで用いられている) ADB コントローラやフロッピーコントローラ、 またビデオハードウェアのすべてのアクセラレーション機能や CLUT 機能があります。 (現在では、ほぼすべての内蔵チップにおける CLUT 機能がサポートされています。) ナッツシェルシリーズのある書籍では、他の Linux の移植版に比べて Macintosh の Linux の移植が遅れるのはこのためだと説明されています。
これらのデバイスが Linux 上でまったく動作しないのは、 それに関する文書を読むことが許可されていないためです。 このようなハードウェアを作っているメーカーに、 文書を公開するように要請してください。 もしもたくさんの人たちが要請すれば、彼らも Linux が重要な市場であると認識するでしょう。